ことばブログ

吃音を中心に、「ことば」について心理言語学や認知神経科学の立場からいろいろなことを考えています。

吃音オンライン相談を開始します.

この度、試験的にではありますが吃音のオンライン相談を始めることとしました。

今日はこの取り組みを開始するに至った経緯について少しお話ししたいと思います。

 

現在吃音のある人は人口の約1%、自然治癒群も含めると7%前後の人が吃音を経験するとされています。しかし、吃音のある人への支援体制は決して充実しているとは言えません。近年徐々にではありますが吃音を専門とする言語聴覚士や医師、また吃音のある人を受け入れる医療機関・専門機関が増えてきているものの、その数はとても少なく、特に受け入れを明言している機関については数えるほどしかありません。その結果、支援を受けたくても受けることができない人が多く、また予約が数ヶ月待ちというところがほとんどであるというのが現状です。

 

私が非常勤で勤めている病院の専門外来も、立ち上げ当初は枠に余裕があったものの、立ち上げ後約2年たった現在では、初診ではかなりの待ち時間が生じてしまい、また継続的な訓練の枠も受け入れギリギリの状態です。また、一般病院であることから受付が平日の16時までとなっており、通院を断念される方も少なくありません。

残念ながら学齢期以降の吃音を完治する(0にする)方法は科学的には確立されていないのが現実です。しかし発話症状を含む吃音の問題を軽減することは可能ですし、発症後初期の幼児期については、適切な対応をすることで、治癒する確率を高めることも可能とされています。

 

その一方で、幼児期に相談に行ったものの「様子を見ましょう」「自然と治ります」と言われるだけで終わってしまうケースや、学齢期以降は「吃音は専門外」と毛入れを断られたり「治りません」「受け入れましょう」と言われるだけの場合が少なくないようです。加えて、インターネット上には吃音に関する情報が溢れており、その中には誤った情報も数多くあるのも事実です。

 

また、Twitter等のSNS上では「吃音の相談を誰かにしたい」「子どもが吃音になったがどうしたらいいかわからない」などのコメントが多く見られます。

 

このような現状を踏まえ、直接的な訓練でなくとも吃音のある方やその保護者に「正しい情報を提供すること」「相談を受けること」「客観的・専門的な助言を行うこと」だけでも、多くの方の力になれるのではないかと考えるようになりました。その後具体的な方法を考える中で、このような支援であれば直接の対面でなくとも、Skype等の遠隔オンラインでも行うことができると思い、オンライン相談を開始するに至りました。

 

Twitterではこの取り組みに対して様々なご意見をいただき、大変参考にさせていただきました。ご意見をくださった方々には感謝しております。この取り組みを後押ししてくださる声を多数いただいた一方で、「吃音ビジネスではないか」「オンラインでは責任の所在が不明確である」「トラブルになりやすいのではないか」などなどの声もいただきました。私もボランティアとして行うべきなのか、オンラインという形式は好ましくないのか、など様々考えました。しかし、私が日頃言語聴覚士として吃音のある方の支援に携わっている以上はプロとして責任を持って有償で行うべきである、また確かにオンラインの特性上トラブルにはなりやすいかもしれませんが、それはどのようなやり方であったもありうることであり、それ以上にニーズに答えることを優先した方がいいのではないか、という考えに至りました。

 

また、この取り組みは今の私だからこそできるもの、と考えているのが開始を決意した最大の理由です。私の周りにも吃音を専門とされている優秀なSTの方々がいらっしゃいますが、どの方も病院等の機関に所属しており、私のように比較的自由に動くことができる人はほとんどいません。私は非常勤で病院に勤務してはいるものの、主たる所属は大学院の博士課程であり、もちろん研究が第一ではありますが、比較的自由に動くことができます。しかし、それもあと1.2年です。だからこそ「今」やるべきだと考えました。

 

このオンライン相談はあくまでも医療機関を受診するまでの「つなぎ」であると考えています。一刻も早く吃音のある方への支援体制が充実し、このサービスの利用者がいなくなることを願っています。ですが、それまで私の環境が許す限りはできる限りの取り組みをしたいと考えています。

 

特に吃音のあるお子さんがいらっしゃる保護者の方々にご利用いただければと考えております。

長くなりましたが、ご意見等ございましたらご遠慮なくいただけますと幸いです。