ことばブログ

吃音を中心に、「ことば」について心理言語学や認知神経科学の立場からいろいろなことを考えています。

吃音・クラタリング世界合同会議に参加して来ました。

書きたいことが溜まっているのに更新が滞ってしまった・・・。

 

先週木曜日から、『吃音・クラタリング世界合同会議』に参加して来ました。

この学会は国際クラタリング学会(ICA)、国際流暢性学会(IFA)、国際吃音者連盟(ISA)、日本吃音・流暢性障害学会、NPO法人全国言友会連絡協議会の合同で行われた初の会議で、吃音とクラタリングの臨床家・研究者・当事者が一堂に会して研究発表や交流会等様々なプログラムが行われました。

自分はポスター発表をして来ましたが、それだけでなく様々な国の専門家や当事者の方とディスカッションや交流をすることができました。

覚えている範囲で印象的だったものを中心にまとめていこうと思う。

 

 

1日目は自分の発表があることもあり朝からそわそわ。

オープニングセレモニーの後はBruce Wampold博士の「癒しの社会基盤 The Social Basis of Healing」に参加。

社会における「Healing」とは何か、という話から、吃音治療におけるクライアントとセラピストとの良好な関係性の構築等々、話は多岐に渡っていた。

やはりプラセボの効果は大きいようだが、その上でもよきセラピストになるために必要なことは何か、という点を考えさせられた。

 

午後はYaruss博士の幼児の吃音セラピーに関する演題。

リッカムなのかDCMベースの環境調整なのかというのは今日本でもホットな話題なだけにかなり興味津々。

ただ結局のところ「クラアントに合わせて介入方法を選択することが大切」というまとめに。まあそりゃそうか。でもそれをするにはセラピスト側は多くの選択肢を提示できるようにしないといけないし、根拠を持って介入方法の選択をしないといけないなと。この点についてはまだまだ課題が多いと思うし、自分も色々とチャレンジしていきたいなあと思った。

 

で、自分が演者のポスターセッション。

自分の演題はDAFとtDCSに関する割と基礎研究寄りな内容だったので、臨床家や当事者が多いこの会議ではあまり興味は持たれないかな?と思っていたが、国外からの参加者には基礎研究者も割と多く、色々な方とディスカッションをすることができた(拙い英語で・・・)。tDCSの研究はやはり基礎研究者の間ではトレンドらしく、かなり突っ込んだ質問や意見をもらうことができとても有意義な時間を過ごすことができた。何よりSoo-Eun Chang博士と直接お話できたことが収穫。先生のラボの学生も多数参加しており、ポスターセッションの時間が過ぎてからも議論が尽きず。

ただ、やっぱりもうちょっと自分のスピーキングのスキルをあげないとなあと痛感...。

 

夜はウェルカムパーティに参加。そこでたまたま近くにいらっしゃったLesley Wolk博士とPhonological Processingの話題で盛り上がり、なんと学会終了後に首都大にいらっしゃることに。さらに偶然にも岐阜大の村瀬教授が留学されていた頃から交流がおありとのことで、村瀬先生も一緒に東京に来られることになった。明後日はお二人と東京観光します(笑)

パーティー後はいつものようにボスと2次会へ。

そんな感じで1日目終了。

 

2日目はクラタリングの概念化に関する基調講演やFluencyBankによる音声リソースに関するセッション、ゲノム研究、ポスターセッション、Palin Paretnt Child Interaction Therapyのセッションに参加。

個人的にはFluency Bankの演題が面白かった。かなり研究への汎用性の高いリソースで、自分の今後の研究にかなり活かせそう。日本語のリソースも今後広がると、吃音の臨床研究の幅が広がるのではないだろうか。

興味のある方はこちらからアクセスできます。→ https://talkbank.org/ 

ポスターでは吃音とASDの発話非流暢性に関する演題が印象に残っている。

今自分が取り組んでいる研究にかなり関係があり、演者のに色々と伺うことができたので満足。英語と日本語は言語学的特徴が異なるので、同様の結果になるのかを見るだけでも面白いかも。

夜はガラディナーに参加。結構飲んだせいかあんまり覚えていない・・・笑

2次会はボス、共同研究をしているT先生というお馴染みのメンバーで飲みにいこうとしたところ、まさかまさかのKリハのS先生もご参加いただけることに。

詳しくは書けないけどいろんな意味で楽しかったし、この飲み会が一番記憶に残っているかもしれない。

 

3日目は森先生のCBTに関する基調講演、マインドフルネスに関するセッション、カテゴリー知覚に関するセッション、ポスター、に参加。今自分が臨床をしている外来では成人はCBTベースなので、森先生の基調講演では自分の知識やスタンスを再確認することができた。言語聴覚士という立場上、流暢性形成を中心とした言語訓練の有効性を示したいところではあるけれど、臨床を始めてからはむしろ逆のスタンスにいて、言語訓練の限界を感じている。Theoreticalであるかどうかが自分の中ではすごく重要で、吃音の言語訓練はそこが弱い気がする。一方で森先生の理論は自分が臨床・研究をしていて日々感じること、また当事者としての感覚と非常にマッチしている。森先生も仰っていたけれど、まだまだやや荒削りが否めない部分もあるので、そこは自身も臨床の中で見定めていきたいなあと。具体的な内容については別記事にします。

カテゴリー知覚については、吃音児と非吃音児ではカテゴリー知覚課題のレスポンスタイムが違うよという内容。これはERP研究でも言われていることなのでやはりそうか、という感想。ただ成績には差がなくレスポンスタイムだけに差があるのが引っかかる。まあでもこれも先行研究と同じかな?

吃音=発話の障害 となってしまうのは仕方がないけれど、発話そのもの以外の側面に関する研究が進んで欲しいなあと思うし、もちろん自分も取り組みたい。

 

で、最終日の昨日は午前中はボスと宮島観光に行って午後からセッションに参加。

注目はMaguire博士の吃音の薬物治療に関するセッション。

何本か論文は読んだことがあったけれど、やはり実用化はまだ難しいんだろうなあという印象。FDAの認可がおりても日本で使えるようになるまでにはさらにラグがあるだろうし。そこでもTMSやDBS、そしてtDCSの話題が出ていたので自分の研究の方向性は悪くないんだろうなと思うと同時に、ライバルが増えることへの危機感も感じている。

そしてそして、最後の夜はひょんなことから森先生と夕食をご一緒することに。

以前から脳研究については色々とご助言をいただけていたけれど、臨床のことも含め3時間近くもお話しするという貴重な機会となった。緊張のしすぎで食べたものの味は覚えていない。

 

セッションについてはざっとこんな感じ。とにかく勉強になったし有意義だった。

ただ、国内の当事者の人たちとあまり交流できなかったことだけが心残り。

どうしても専門家という色が強くなっているせいか、当事者としてはあまり楽しめなかった。数年前にうぃーすたの全国大会で仲良くさせていただいた現おおさか結言友会の会長さんと再会できたことはとても嬉しかった。副会長さんともお話しできてよかったです。他にも何名かの方からAbemaの先生ですよね?とお声がけいただけました。やはりAbemaの影響は大きいようで・・・。ありがたいやら恥ずかしいやら。

ただツイッターのTL上では本当に多くの当事者の方が参加されているようだったので、うぃーすた九州の方とかとも直接お話ししてみたかったな、と。

 

今振り返ってもこんなに充実した4日間が今までにあっただろうかと思えるくらい素晴らしい日々でした。普段はマイノリティな吃音者がマジョリティである不思議な空間、とても居心地がよかった。そして世界中の色々な国に吃音やクラタリングの当事者がいて、同じ悩みを持って、そしてそれをサポートしたいと本気で取り組んでいるセラピストや研究者も大勢いることを改めて認識できた。

この世にこんな話し方をするのは自分だけだ、どうして自分だけ、と絶望していた頃の自分がこの場にいたらどれだけ救われただろうか。

きっと今もどこかにそういう思いをしている人がいるかもしれないと思うと、当事者・セラピスト・研究者として自分ができることは何なのかを改めて考えて、そして行動していかなければならないと改めて感じることができた4日間だった。

 

 

長くなったのでまとめると

・とにかく充実した4日間

・セラピストとしての技量が足りないことを痛感

・吃音者を取り巻く問題は世界で共通している(雇用など)

・研究者としてはtDCSの研究をより発展させたい

・当事者というアイデンティティが失われつつあるのを何とかしたい

・Abema効果すごい

・英語のスピーキング能力を上げたい

・今の自分の環境を最大限に活かした取り組みを充実させる

・みなさんありがとうございました