ことばブログ

吃音を中心に、「ことば」について心理言語学や認知神経科学の立場からいろいろなことを考えています。

吃音×VR

一昨日のこと。

先日吃音の治療のためのVRを開発しようとしているという方から連絡をいただき、臨床終わりにお会いすることに。外来のボスも興味を持たれたようで急遽一緒に。

線路火災?か何かで電車が大幅に遅延していて、川崎から渋谷まで1時間近くかかる始末。お約束の時間ギリギリで待ち合わせ場所へ。

自己紹介もそこそこに吃音VRの中身についてお話を伺う。

お会いするにあたって海外の動向を少し調べていたところ、すでに数本の論文が出ているようだが、他者からのインタビュー場面のVRでは実際の対面インタビュー同様に吃音頻度が上昇したというもの(Brundageら, 2006)がある一方、吃音頻度の有意な変化は見られなかったとするもの(Brudangeら, 2016)もあり、まだまだ研究途上の領域のようである (いずれも同じ研究グループなのか)。

 

お話を伺ったところ、吃音者が苦手とする様々な場面(面接・上司との会話・飲み会での挨拶など)をVR化し、いわゆる暴露療法のためのツールとすることを目指しているとのこと。確かに言語療法の最大の問題点はその効果を発揮したい上記のような緊張場面での効果が、訓練時と同じようのは現れにくいことであり、それを解消するためのツールになりうるかもしれない。

ただ、そもそもVRが実際の対人場面の代替となるかはどの程度VRに没入できるかにかなり左右されるだろうし、デバイスの性能にもよるのかもしれない。この辺のことはそもそもVRに関してほとんど無知なのでなにも言えないけれど・・・。

いずれにせよ実用化には

VRが吃音に影響を及ぼすこと(対人場面の代替となる)

②対人での暴露療法が吃音に有効であること

③吃音VRを用いた暴露療法が効果的であること

を示す必要があり、さらに③についてはVRではないただの映像とは異なるのか、という点についても検討する必要があるだろう。

それに、そもそも暴露療法は専門のトレーニングを受けた専門家の元で段階的に進められるべきもので、臨床実験のハードルもなかなか高いような気がする。完全に非侵襲的かというとそうでもないだろうし。社交不安障害やPTSDなどに対するVRによる暴露療法の効果の検討はだいぶ行われているようだけど、これに関してもまだまだ議論の分かれるところのよう(Morinaら, 2015)。

 

成人吃音者の40%以上に社交不安が合併するという報告もあるし(Blumgartら,2010)、VRがなにかしらの形で吃音治療の一助になる可能性はあるだろうと個人的には期待している。

 

自分の脳刺激研究の方も早く次のデザインを決めて進めないとなぁ。

 

参考・引用

・Frequency of stuttering during challenging and supportive virtual reality job interviews: Brundageら, 2006

・Utility of virtual reality environments to examine physiological reactivity and subjective distress in adults who stutter: Brundageら, 2016

・Can virtual reality exposure therapy gains be generalized to real-life? A meta-analysis of studies applying behavioral assessments: Morinaら, 2015

・Social anxiety disorder in adults who stutter: Blumgartら,2010