ことばブログ

吃音を中心に、「ことば」について心理言語学や認知神経科学の立場からいろいろなことを考えています。

こんな研究をしています

またもやかなり久しぶりの更新になってしました。

8月上旬は修士論文中間発表会があり、かなりバタバタしていたので(言い訳ですね)。

それにしても暑かったり涼しかったり、なんだかよくわからない気候が続いていますねー。

こんな時は研究室に籠もるのが一番!ということで最近は研究室への出没率が高いです。普通大学院の研究室というとコアタイムがあり、毎日研究室に通うことが当たり前だと思うのですが、僕が所属しているところは変わっており、研究室ではなく教室という単位に所属し、その教室の先生の中から指導教官を決めて研究を進めるというスタイルになっています。なので居室は研究室というか教室の院生室で、他の指導教官の下で研究している院生や研究生と同じ部屋にいます。ちなみに所属は言語科学というところで、理論言語学と言語脳科学の両面から言語を探求しよう!という珍しい研究室です。なので院生室には音韻論や統語論を専攻している学生もおり(というか今は言語脳科学は僕一人・・・)、先生が常駐しているわけでもなく、各々が自分のペースで過ごしています。

 

前置きは長くなりましたが、今日は僕が吃音の何を研究しているのかについて書こうと思います。大学院進学時には正直「吃音の研究がしたい!」という大雑把な動機しかなく、テーマも決まらないまま入学しました。その中で指導教官と昨年在籍されていた博士研究員の方が研究に用いられていたtDCSという装置を知り、これを吃音研究に使えないか?と思い(他に案もないので)、今はtDCSを使って吃音と脳機能の特異性との因果関係に迫ろうと思考錯誤しています。

 

このtDCSというのはまだあまり国内では言語機能研究には用いられていないのですが、欧米では失語症の訓練への応用研究が進められていたり、PT,OTさんの分野では近年「ニューロリハビリテーション」として国内でも臨床の現場で使用されているようです。この装置はざっくりいうと、2つの電極(陽極と陰極)を頭上に貼り、そこから微弱な電流(1~2μA )を流すことで、電極直下の脳領域の活動を一時的に修飾するというものです。陽極では活動を促進、陰極では抑制することができます。

 

吃音の原因には諸説ありまだまだ明らかになっていないことが多いですが、様々な脳機能イメージング研究(fMRIやfNIRS)により、吃音者の脳の構造・機能が非吃音者と異なる点があることが示されています。しかしここで注意しなければならないのは、イメージングでは、脳機能の異常と吃音症状との関連、すなわち相関をしめしているに過ぎず、因果関係は示せていないという点です。例えば、吃音症状が現れた際に脳のAという領域の活動が非吃音者と比べて有意に高くなることが示されたとすると、このことから言えるのは、脳領域Aの活動と吃音には関連があるということで、脳領域Aの活動の異常が吃音の原因である、とは言えないということです。なぜかというと、この手法では、吃音の根本の原因が他にあり、その結果生じた吃音という現象による副次的なものとして脳領域Aの活動に異常がみられる可能性や、長年の吃音症状という行動が原因となり、脳活動に異常をきたしてる可能性も否定できないからです(卵とひよこどっちが先か、の問題と同じです)。

これから本格的に実験協力者を募集して、結果を出していけたらと思っています。