ことばブログ

吃音を中心に、「ことば」について心理言語学や認知神経科学の立場からいろいろなことを考えています。

吃音をカミングアウトするということ

こんばんは。

昨日は吃音当事者のセルフヘルプグループのうぃーすた関東の例会に行ってきました。
毎月ある例会ですが、土曜日が固定でバイトだったのでかなり久しぶりの参加。
 
今回はいつもと違い、《サイン・ウィズ・ミー》というカフェでの例会でした。このカフェはスタッフの方々が聴覚障害のある方たちで、手話が公用語となっているお店です。
 
もちろん手話が出来なくてもメニューの指差しで注文等は可能でした!スープも美味しかったし、何より働いている方々の笑顔がとっても素敵なお店でした。
 
で、昨日はあまり多くの人とは話すタイミングがなく数人の人と長いこと話していたのですが、そこで話題になったのが、自分の吃音をカミングアウトするかどうか。
 

カミングアウトのススメ

僕は積極的に周りに自分から自身の吃音のことをオープンにしていますが、初めは勇気がとてもいることだし、周りの反応がどうなるのか、今までの人間関係が壊れたらどうしようとか、吃音のカミングアウトには色々な不安が伴います。
 
でも僕は、1人でも多くの吃音当事者にカミングアウトして欲しいと思っています。
なぜなら、まずその人自身がとても楽になれるから。吃音者の多くは自身の吃音を周りに知られないよう、思考錯誤して隠そうとします。言い換えを駆使したり、必要最低限しか話さなかったり。
 
僕も中学生まではそうでした。でも、実際吃音を完全に隠すことは不可能で、かつ隠す努力はとてもとても大変で苦しいものでした。
 

カミングアウト体験記

僕が初めて吃音をカミングアウトしたのは、高校入学直後の自己紹介のとき。
 
その高校は3年間クラス替えがなく、クラスメイトとは長い付き合いになること、また小中では吃音のことでからかわれたりいじめに近いことをされてきていたので、そこから抜け出したかった、という理由でカミングアウトを決意しました。
 
いざやってみると周りのリアクションはこちらが不安になるほどに何もなく、『それがどうしたの?』といった感じで、とても衝撃を受けたことを今でも覚えています。
 
カミングアウトしてからは、隠す努力もなくなり、また周りが自分がどもることを分かってくれているという安心感があり、それまでよりも好きに言いたいことを言って、人と関わることを心から楽しむことができました。
 
この高校でのカミングアウト、そして高校での友人たちとの関わりがいまの自身の吃音の考え方に結びついていると思います。
 

周りのためにもカミングアウトしよう

また、こちらからカミングアウトすることは周りのためにもなると思います。
 
学校の友人や職場の同僚など、日常的に関わりがある人の中には、きっと僕たちの話し方について、『ん?』と不思議に思っている人が少なからずいると思います。
 
よく吃音者は自分がどもった時に相手に怪訝な顔をされるとそれととても気にして落ち込んだり、吃音をわかってもらえないと嘆きますが、これは仕方のないことだと僕は思います。
 
非吃音者にとって、人と普通に話していて言葉に詰まることはまずありえないことで、想定出来ないことです。
 
自分が想定していないことを相手がしたら、『どうしたんだろう?』『大丈夫かな?』と思うのは普通のことではないでしょうか?それが表情に出るのも仕方のないことです。
 
しかし、相手もこちらに『その話し方はなんなの?』とはなかなか聞きにくいものでしょう。
 
だから、こちらから言ってしまうことで、相手のこちらに対する『どうしたんだろう?』を解決し、こちらにとっても話しやすい環境を作っていくべきだと思います。
 

カミングアウトが啓発の第一歩

そしてもう一つ。吃音者一人一人が自分と関わりのある人たちにカミングアウトしていくことが、何よりもの社会に対する啓発活動だと思います。
 
私は共同研究で吃音の社会的な認知度の調査をしていますが、以前から日本では吃音の認知度が低く、それが吃音者の生き辛さに繋がっていると言われています。
 
それを少しでも変えようと当事者団体が運動をしたり行政に働きかけたりしていますが、それよりも1番効果的なのは当事者それぞれによる自分の周りの人へのカミングアウトだと思います。
 
僕はTwitterはもちろんFacebookでも自身の吃音のことを明かし、吃音に関する投稿もしています。記事を見る人の中にはもともと直接吃音のことを伝えている人もいれば、TwitterFacebookでしか知らないであろう人もいますが、このようなSNSを使うことで直接よりも心理的負荷も少なく、また効率よく発信できると思い積極的に利用しています。
 
こういうカミングアウトをしてきてよかったなと思った出来事を一つ紹介します。
 
以前小学校の頃の野球チームの同期数人と集まる機会があったのですが、その時にある1人が『Facebookでたまに見るけど、話す時に引っかかるやつって吃音っていうんだな。小学校の時とかからかって悪かった。』と僕に言ってきました。
 
確かにからかわれたしとても嫌な思いをさせられた相手でしたが、いまはもちろんそうは思っていないし、その人からこんなことを言われるなんて思ってもみなかったのでとても衝撃的でした。
 
小中学生は自分と少しでも違う人をからかいやいじめの対象にしたい生き物であり、そう考えると吃音者は格好のターゲットかもしれません。
 
でも、周りも自分と同じように歳を重ねて大人になっているわけで、過去の経験に囚われずにカミングアウトしてみる勇気をもつことで、こういう経験ができると思います。
 
僕のFacebookの友人は300人ほどですが、少なくともその人たちは『吃音』というものの存在を知ってくれたと思います。この積み重ねが社会への啓発に繋がると思いませんか?
 
もちろんカミングアウトにはかなりの勇気が必要ですし、タイミングも大切だと思います。もしこの記事を読んでくださっている方の中に、カミングアウトしようかどうか迷っている当事者の方がいれば、コメントとか下さると嬉しいです。何か僕にもできるかもしれません。
 

『知ってもらう』≠『理解してもらう』

最後に一つ、吃音をカミングアウトすることで周りに吃音を『知ってもらうこと』と『理解してもらうこと』は僕は違うと思います。
 
そして後者はハードルが高いです。カミングアウトすれば皆んなが吃音を理解してくれて、私に配慮してくれるだろう、なんていう期待をしてカミングアウトすることはオススメしません。
 
まずは『吃音』の存在を『知ってもらう』ことを目的に、自分と関わりの深い人から少しずつカミングアウトしていくとこをオススメします。